早春の季節は、一日いちにちが駆け足でもしているかのように、風景が様変わりしていく。白、黄、青、赤の様々な花々が道々に、入れ替わり立ち替わりして目を楽しませる。夜明けが、日ごとに早くなり、日暮れが遅くなっていく。空は灰色から、透明な青空へと配置転換していく。気持ちが追い立てられるようで、冬のように炬燵に入って…なんて、じっとしていられない。畑の生き物たちがぼくを呼ぶ。去年から育ってきた白菜、大根、中島菜がトウ立ちし、黄色い花を咲かせ始めた。今は手持ちの野菜が少ないから、このトウ立ち菜、花、蕾を、生で、少し焼いて、茹でて頂く。旬なものが、おいしい。
ぼくの畑で育っていく野菜は市販のものに比べると、子供のように小さく、不揃いだ。化学肥料や農薬を使わない。おまけに耕さない。雑草と同居している。手抜き畑ではないのだが、なるべく自然のままのようにしたいだけなのだ。でも、味だけは、天下一品と思っている。
田んぼや畑には、その人の足音が、一番の肥料、栄養となると言われる農家の翁に、時に出会う。人間の感情、思いやりが、彼らに直に伝わっていく。土、動物、昆虫、植物、人間、生き物たちみんな、同じ発生源を持つ同朋だ。太陽と光り、空気、水は、生きる源泉だ。他の生き物たちを利用するだけ利用し、踏みにじり、光りが、空気が、水が、大地があることを当然と思い、汚し続けていくと、どうなっていくかは、ぼくら自身がどこかで分かっていることなのだ。 2021年3月25日
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