今、春たけなわ、一年中でもっとも快適で過ごしやすい季節。寒くも暑くもなく、蚊やブヨに煩わされることもなく、セリ、ニラ、フキ、カンゾウ等々を無造作に採って食べられる黄金の季節。草刈りの合間に、ちょっとした台に腰掛けて、一休み二休みする。周りの風景が刻々と変わっていく。山々の色合いが淡い黄緑から、緑へと変化していく。次から次へと色んな花が満開になり、萎んでいく。つい先日まで盛りだった赤、白、橙の椿がみんな散ってしまった。白、で目立っていた雪柳も色あせてしまった。ほとんどが数日間の僅かな花の命だ。この宇宙の、全ての命を貫いているもの達、星々から草花、昆虫、あらゆる生きもの達も、みな同じ道程をたどる。生まれ、育ち、自立し、老いて、死んで、新しい命へと繋いでいく。みんな一つひとつの姿、形、性質は違うけれども、元を辿っていけば、出所は同じと言っても過言ではないだろう。
一人の身体は、約三十兆個の細胞で出来ているらしい。三十兆個と言われても、戸惑うだけだが…。この細胞の一つひとつが、また個別の世界を宿しているというから、さらに何が何だか困惑するばかりだ。ぼくらは大概、自身が生きているということが当たり前のように思ってはいるが、ちょっぴり考えても、実に不可思議なことだと気づかされる。でも、そんな不可思議さも、日常生活の中で、すっかり忘れ暮らしている。苦しみ、悩み、悲しみは誰にでもある。しかしそれらが、この世に生きている不可思議を思い出す妙薬になっていくことは、実に皮肉な話しだ。 2026年4月29日




