2026年5月1日

172 能登あすなろ通信 春たけなわ

 


今、春たけなわ、一年中でもっとも快適で過ごしやすい季節。寒くも暑くもなく、蚊やブヨに煩わされることもなく、セリ、ニラ、フキ、カンゾウ等々を無造作に採って食べられる黄金の季節。草刈りの合間に、ちょっとした台に腰掛けて、一休み二休みする。周りの風景が刻々と変わっていく。山々の色合いが淡い黄緑から、緑へと変化していく。次から次へと色んな花が満開になり、萎んでいく。つい先日まで盛りだった赤、白、橙の椿がみんな散ってしまった。白、で目立っていた雪柳も色あせてしまった。ほとんどが数日間の僅かな花の命だ。この宇宙の、全ての命を貫いているもの達、星々から草花、昆虫、あらゆる生きもの達も、みな同じ道程をたどる。生まれ、育ち、自立し、老いて、死んで、新しい命へと繋いでいく。みんな一つひとつの姿、形、性質は違うけれども、元を辿っていけば、出所は同じと言っても過言ではないだろう。

一人の身体は、約三十兆個の細胞で出来ているらしい。三十兆個と言われても、戸惑うだけだが…。この細胞の一つひとつが、また個別の世界を宿しているというから、さらに何が何だか困惑するばかりだ。ぼくらは大概、自身が生きているということが当たり前のように思ってはいるが、ちょっぴり考えても、実に不可思議なことだと気づかされる。でも、そんな不可思議さも、日常生活の中で、すっかり忘れ暮らしている。苦しみ、悩み、悲しみは誰にでもある。しかしそれらが、この世に生きている不可思議を思い出す妙薬になっていくことは、実に皮肉な話しだ。       2026年4月29日

 

2026年4月3日

171 能登あすなろ通信 花見

 


花見、と言ったら、やはりサクラ以外にはないらしい。五年ほど前に、友人たちと、弁当を持って猿山灯台で花見宴会をした。今年は、また太陽のサンサンと降り注ぐ光りの下で花見しようと、企てているのだが…。そのサクラが開花しそうな風情をしている。そちらのサクラはどうだと、関東にいる友人が尋ねてくる。憂鬱なニュースが多い昨今には、ともかく華やぐ話題を提供したい。それは、やっぱり今、サクラが一番相応しい。

いつまでも寒いと感じている。ぼくだけなのか、と思っていたら、今年は例年よりも寒いと言う声が多い。それでも、閉め切っていた部屋を開け放したり、朝晩のストーブの出番が少なくなってきている。その内、炬燵も要らなくなっていくのだろう。毎年、必ず冬から春を迎えている筈なのに、どんな心持ちだったのか忘れている。春という声を聞いて、温かくなるぞと、期待している分だけ、じれったく思っている節があるようだ。ゆっくり、焦らず、今日一日を大切にと思う。

恐竜時代は、一億七千万年続いたらしい。今、文明の新しい技術によって、益々その恐竜の化石が発掘されている。その著名な恐竜先生が、人類も、いずれ絶滅すると言う。絶滅すると改めて聞くと、深く頷くと共に、悲哀も感じる。ぼくも、誰でも滅することは分かっていながら、ともあれ今日一日の平穏無事を思いながら暮らしている。しかしわが身だけの平穏はあり得ない。黒島や能登だけでも、日本だけでも、人間だけでもあり得ない。地球の全ての生きもの達と、共に生きている事実を思う。  2026年3月29日