2024年12月29日

156 能登あすなろ通信 明日への生活

 


畑のある野原に出ると、そこはすっかり見渡す限り枯野になってしまった。夏の間、刈っても刈っても、旺盛に育っていた雑草たちも、息を潜めて、土の中で冬眠生活に入ってしまっている。藪に被われて前へ進めなかった森の中も、枯れ切った藪の中へと入っていける。中へと入れば入る程、見慣れた世界とは遠くなっていく。時に、すぐ近くにイノシシの息が聞こえて、慌てて引き返していく。

世界中に、現在八十億の人間がいるらしい。その一人ひとりには必ず父母がいて、存在できる土地があり、仲間があり、人間としての会話ができる環境にある。それがどのような状態であろうと、劣悪であろうと何であろうと、確かにこの地上に、その分の土地を提供されて生きている。その場所で、八十億人の一人ひとりが何かを感じ、触れ、思って生きている。それは、実に一人ひとりの独自の世界であり、八十億人の世界が、その分だけ存在しているといっても過言ではないのだろう。                

今年も後、二、三日で年が明ける。今年は、能登では地震と、その後も豪雨が続いた。今も心中穏やかならぬ多くの方々がいる。でも、何があったか、そして今、何をして何を感じているかは、実は一人ひとりの心の奥に収められていて、本当のことを吐露できていくのは難しいのだと思う。来年、再来年、さらに何年か経って、改めて今年の思いを、今と違った態度で見直すことができていく、明日への生活を思う。      2024年12月29日

0 件のコメント: