2022年9月26日

129 能登あすなろ通信 秋の虫たち

 


風もなく、海も穏やかな日暮れ時、ふっと気がつくと、周りじゅう、家の中までコオロギやスズムシなどの秋の虫たちの鳴き声でいっぱいになっていた。陽が沈んで、夕焼けに染められた山々や海、黒島の黒瓦の家々までが、秋の虫たちと共鳴しあっているように思える。何もかもが同じ地球の住人として、共に生きている風景のようだ。

ハンパじゃない今夏の猛暑が、漸く遠ざかっていく。余りの熱さで、日中外に出て、ちょっとした用事を足すことすら、躊躇する日々もあった。毎年、毎年暑くなっていくような気がする。だが、そんなことも秋が深まるにつれ忘れていく。

暑くて、汗だくになり、夕方の海へとよく通った。そこで泳いで、潜った。砂浜の海は、子供の頃から親しんできたが、岩場の海は、今まで殆んど知らなかった。潜ると、地上とは異にした世界が迫ってくる。大小の魚が、タコが、見たこともないような海草、生きもの、岩が展開してくる。深く潜れば、潜るほど、神秘的で、怖くもあり、心臓がドキドキしていく。

海に入っても、森の中に入っても、普段の生活とは異にした世界に触れていく。普段の生活では通用しない世界が、直接裸身を通じて触れていく。どこか分かったつもりになって、自然に対して、世の中や人に対して、何よりも自分の人生に対して、何気なく日々を生きてしまっている。この人生、今日、何があるのか、実は、誰にも知ることができない。この今日を疎かにして、明日への道は生まれない。                 2022年9月25日

                            

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