2022年5月28日

125 能登あすなろ通信 空

 


一日の太陽が、オレンジ色を放ちながら、海へと沈んでいく。この光景を食卓のある窓から眺めている。もっとも贅沢で、ゆったりした時間だ。オレンジ色、橙色、藍色、紺色…どんな色を持ってきても追いつくはずもない、瞬時に移り変わっていく空。今までの見慣れた青い空が、激しく、ドラマチックになっていく。

一日、できることはやった。できない、しない、ことが大半だった気もする。しかしそんなことも、何もかもが、オレンジ色から暗くなっていく空に包まれ、夜の静寂へと囲まれていく。後は少しの片づけをして、歯を磨いて眠るだけだ。明日は…、明日の、何かが起こるのだろう。布団の中では、何も分からず、忘れて、夢の世界で生きていく。目が覚めれば、新しい太陽が昇り、初めての一日を迎えるのだろう。

都会にいた頃は、空をたっぷり眺めるには、意識しなければならなかった。外へと態々出向かなければならなかった。それ程、空が狭かったのかもしれない。能登へ移り住んでから、空がとても広く、近くなった。真冬でさえ、炬燵に足を突っ込みながら、空を眺めている。退屈すると、空を眺めている。雲が、木々が、鳥が、風が、葉音が、空に映し出されていくのを眺めている。

 空は、飽きさせることのない巨大なスクリーンのようだ。朝焼け、夕焼け、灰色、大雨、嵐の、雷の…そして、紺碧の空。空は、心のスクリーンとして、天が与えた鏡と、感じている。                   2022年5月25日

 

                     

 

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