2021年6月25日

114  能登あすなろ通信  夏至

 


今日は夏至、一年中でもっとも昼間のながい一日。夜明けの四時、往来では、もう小鳥たちが騒がしい。一歩外へ出てみると、既にかなり明るくなっている空が、一面に展開している。…寒いので、なかなか布団から出られなかった真冬。ましてや四時だと、眼が覚めていても、布団にしがみつくようにして、ねばって、じっとして起きなかった今冬を思い出す。

太陽と地球は、絶妙な距離にあるらしい。遠くでもなく、近過ぎでもない、そのちょうど良い関係が、地球に生命を誕生させたらしい。その太陽が、余り地球に近づき過ぎると、恐ろしくなる位の日照りを浴びせ、遠く離れ過ぎると、寒くなって、温みが欲しくなるのは、太陽との間柄だけではなく、人間関係の間合いでもあるようだ。適度の距離や間合いが必要なのは、生き物の共通の、生きる本能であるのかもしれない。

至る所で、アジサイがいっせいに咲きだした。今の季節でしか味わうことができないこともあって、せっせと部屋の中へと招き入れ、夜の灯りの中でも楽しんでいる。色、形、艶、色気…、その何とも言えない姿態が飽きさせない。ぼくがぼくである前に、ずっとずっと前に、彼らと全く違った関係であった時代を思う。

徒に過ぎ去ったことに悩み、まだ来ぬ将来への望みや心配、憂いに時を過ごすことで、一番大切なことが失われていく。今しかない、旬が、常にある。この年齢の、今の状況でのぼく自身が、たった今でしか味わえないものを逃してしまうこと程、勿体ない人生はない。        2021年6月24日

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