2021年11月26日

119 能登あすなろ通信 木枯らし 

 


時雨から、次第に木枯らしへと変わっていった。そんな荒れた天気が始まって、もう十日以上にもなる。つい先日まで、紅や橙、黄の華やかで色づいていた葉っぱも、今は大概くすんだ茶になり、落ち葉となっていく。裸になってしまった木々が、少しづつ増える。空や大地、あちらこちらの風景が冬へと急激に模様替えしていく。

昨日木枯らしが、雨に霰をまじえて、海の方から猛烈な勢いでやってきた。家が軋んで、揺れた。二階にいると、船に乗っているかのように揺れた。…六年前に初めて、同じ揺れを経験した時には、慌てて階下にと降りた。びっくりしたのだ。今も、そんな揺れに、多少の不気味さを感じるが、直に揺れは止むだろうと、じっとして身を任せている。…まさか、この嵐で、海底に沈むことはないだろう。海に面した外壁の板に、激しい風雨が、ぶち当たり、打ち鳴らす。それらを必死に守り、防いでいる板や家を思う。そんな時、家が、柱や板壁が、生き物のように、わが身のように感じてくる。

様々な道具、物、車その他、ありとあらゆるものが、ぼくとの関わり方次第で、中身が変わってくる。動かないものが、死んでいると思っていたものが、そうとはいえないものに変わってくる。

見える。聞こえる。触れられる。そういう感覚以上のものが、この世界に存在している大概のものなのではないか。ぼくのあり方、気持ち次第で、当たり前に通じていた感覚、認識が破れて、新たに生まれ変わっていくものがある。世界は、常に変幻自在していく準備をしている。 2021年11月25日

                      

0 件のコメント: