2021年10月31日

118 能登あすなろ通信 稲刈り

 


急に寒くなってきた。先日までの薄手の衣類では間に合わない。押し入れに閉まってあった冬用を取り出し、厚手の毛布で眠る。漸くほっとする。

この寒さで一時避難でもしているのか。毎晩賑やかな演奏を奏でていた秋の虫たちも鳴りを潜めている。何処かに去ってしまったのかもしれない。残った楽員たちが独唱でもするかのように歌っている。だが、きっと、その内、誰もいなくなっていく。

畑や道々の雑草も、急に勢いがなくなり、今年はこれでお仕舞だ、といった風に、萎んでいく。一日中あちらこちらで唸っていた草刈り機が、時おりにしか聞けなくなっていく。人々も植物も冬支度へと向かっていく。

何十年振りに田んぼに入って稲刈りの手伝いをした。夏の長雨で田んぼがぬかるみ、コンバインが入り難くなった所を手で稲を刈っていく。畑とは違った、山間地での田んぼの風景が新鮮だった。あたり一面、みどりの木々、草花たちの彩りが目に沁みる。今まで背の高い稲で見え難かった小さな草花たちが、タネツケバナ、オモダカ、カヤツリグサ…が、稲を刈った後から露わになって、目に飛び込んでくる。辛くなった腰をのばすと、立木のみどりが瑞々しく映る。このこころが、新たに生まれ変わりさえすれば、これらの光景もさらに装いを新たにしていくに違いない。

ありとあらゆるもの、万物が語りかけてくる。全身を、魂を通して語りかけてくる。あらゆる生きものたちの共通のコトバを忘れてしまった人間は、それを思い出すかのように、彼方の星々を眺める。      2021年10月25日

                      

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