十日程前、遠くで、リーン、リーンと、微かに鳴く鈴虫の声がした。それが、日ごとに少しずつ近寄ってきて、今は、すぐ近くで鳴いている。都会にいた頃、友人から鈴虫をもらい、いっとき飼っていた経験があるから、この声には敏感だ。今、辺りでは、いろいろの虫たちが鳴き声をあげているが、やはり、この鈴虫の声が、最高だ。この澄んだ、透明な声は、あらゆる虫たちで、のど自慢大会となれば、上位優勝となるに違いない。
日差しが強く、カンカン照りが続くが、風は、秋の気配を運んできている。めったに人が通らぬ、開いたままの玄関口の上がり框に腰かけていると、その風が、裏口の方へと吹き抜けていく。ここは家じゅうで一番快適な場所。冬には、一番寒く、冷たい場所が、夏になると逆さになってしまう。生きていることの禍福は、条件によって、真逆になっていく。毎年夏になり、玄関の土間が、最も快適な居間に、衣替えする度に、きっと同じことを思ってしまう。
心の中で、ある思いを、じっくり温めている内に、それが卵から雛がかえるように、現実化してくる。良いことも、悪いことも、安心できることも、不安なことも、同じことを思い続けている内に、形として現実に、少しずつ表れてくる。不安や災いを運んでくるニュースや噂が多い。ならば、それらも肥料にして、明るく、楽しく、活き活きと、自身の現実を、どう変えていくかを、工夫、創造していくのは、面白い。どんな条件であろうと、環境にいようと、今、自身ができることがあること以外に、仕合せはない。 2020年8月24日
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