秋の虫たちが、にぎやかしい。窓を閉め切ってしまうと、彼らの声も遠のいてしまうのだが、幸いにまだ網戸でいることが多く、すぐ近くで一緒に暮らしているように思うのが嬉しい。手で触れると、小さくて壊れてしまいそうな虫たちの、透明な声にじっと耳を澄ませていると、彼らの世界へと誘われている気がする。この季節でしか味わえない至福の時間だ。
九月に入ってからの雨が少なく、畑が乾き切っていた。ジョウロで水をかけるのだが、たかが知れている。雨が…と思っていたら、台風と共に、雨が降った。ほっとした。この台風は大変強力だった為、いまだに千葉県の一角は停電と断水が続いていると報道されている。
三月のまだ寒い季節に、何日も停電になった東日本大震災を思い出した。都市が、どこの施設も暗くなり、電池が売り切れ、スーパーマーケットの棚が空っぽになった当時のことを思い出した。津波と原子力発電所の崩壊の繰り返しのニュースを思い出した。しばらく海に近づけなかった。家には、幸いにロウソクがあり、電気を使わなくてもよい石油ストーブがあった為、暖房と明かりがあった。電気頼りの高層ビル、マンションは、水も出なかったし、暖もとれなかった。
何も確かなものはない。便利で高価なものが、却って災いとなることもある。明日は来るとは限らない。明日を頼らないで、今日を生きようと思い始めたのは、あの頃からだったのだろうか。 2019年9月24日
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