2025年11月3日

166 能登あすなろ通信 苦

 


とんでもなく暑かった夏は、もうずっと遠くへ行ってしまったようで、殆んど影も形も見えなくなってしまった。その代わりに、一年でもっとも過ごしやすい秋を通り越して、寒い冬が目の前に迫ってきている。せっつかれるようにして、炬燵、ストーブを押し入れから出して、掛ふとん、毛布を日に干したりしていく。炬燵は早速使い始めた。夜はストーブに火をつけ始めた。熱い味噌汁、おかずが美味しい。夏の間の冷やした物ばかり好んでいた食卓とは打って変わってしまった。

ここ黒島は、今、あちこちの傷んだ家々の解体工事のまっ最中。普段静かで、人通りも少ない黒島であるが、工事関係者の声や姿が出入りする。朝から重機の音が、大型トラックが走っていく。まるで都会の片隅で暮らしている感覚だ。一軒一軒と壊されていくにつれ、空き地が増えていく。誰も住んでいなかった家であっても、その家が失われて、見えなくなっていくことは物悲しい。他人ですらそんな思いがするのだから、当の本人にしてみれば、自分の一部分を壊されていく気持ちがするのだろう。

今、日々爆弾を浴び。戦火に追われ、命からがら逃げて、逃げて裸同然の暮らしを強いられ、食べ物も中々手に入らない人々がいる。自然災害、個人的な災害で、急な困難な生活を強いられている人々がいる。私たち一人ひとりも、明日どんな生活が待っているか、誰も分からない。「生老病死」という人生を、仏陀は苦であると言われた。その苦を、真面目に受け留めていく人は、この今を楽にしていくことに努めていくのだろう。                         

2025年10月31日

 

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