2023年12月23日

144 能登あすなろ通信  冬至

 


能登の黒島で最初に住み始めたのは、八年前の11月初め。先ず一人で住み始めたこともあり、寂しいこと、慣れない土地での生活、日本海側の憂鬱な空模様に戸惑い、一冬を越すのに苦労した。それから少しずつ、少しずつそういった諸々のことにも親しんでいき、今は、すっかりここの土地の一人となってしまった。

朝、畑やその周辺をぐるりと回って来る。始めは億劫な気持ちが大きいのだが、その内心身ともに温くなり、気持ち良くなっていく。日々何かしらの発見がある。近頃、猪の足跡は見えなくなったが、何者かエサを食い漁って穴を掘っている形跡がある。冬の嵐で飛ばされた枝や竹、落ち葉が昨日とは違う風に転がり、配置されている。しかし、何よりも空や光の加減や空気が昨日とは異なっているためなのか、これまでとは違う、見知しらぬ世界へと躍り出たように感じる。自然は、刻々と変化し続け、同じ状態がない。ただ、我がこころに、何かしらのしがらみ、不安事を抱えている限り、こういった自然の変わり様に感じていく窓口が閉ざされているのだろう。

静けさ、沈黙の中に、当たり前の日常生活のなかに、キラキラした宝石のようなものを発見することがある。何気ない人の仕草に、一陣の風のそよめきに、笹竹が風と戯れる音、揺らめきに、新鮮に、驚かされることがある。幼い頃、そういった日々を誰もが生きてきたのではないのか。大人になってしまった私たちも、何時でもそんな日々を甦らすことができるチャンスを持っていると信じている。                  2023年12月25日

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